氷の美女と冷血王子
「孝太郎、お前は麗子のことが好きなのか?」
「ああ」

よし、即答だな。

「じゃあ、なぜ会いに行かない?」
「あいつが俺を拒否している」

まあ、確かにその通りだ。

「何か理由があるとは思わないのか?」
「それは・・・俺のせいで怖い思いをしたから。俺がいるとそのことを思い出すと言われた」

うぅーん、そこは少し違うな。

「彼女の言う事を信じるとして、そう言われたお前は麗子のことを諦められるのか?」
「・・・」

諦めきれないから、こうなったんだよな。

「もう一度、ちゃんと話してみろよ」
「しかし、彼女が」

まだそんなことを言っているのか。

「昨日だって、麗子目当ての客が何人もいたぞ」
「そうか」

「それに」

ポンッ。
俺は麗子から預かった紙包みを机に投げた。

「何だ?」
「見てみろ」

テーブルの上の紙包みを手にとり、中を覗いた孝太郎の表情が固まった。

「これは・・・」
「手切れ金の300万だ。おばさんが麗子の所に持って行ったらしい」
「・・・」

「麗子から、『返して欲しい』って頼まれた」
「俺は知らない」
「だろうな」

誰もお前の差し金だなんて思っていない。

「孝太郎。あいつは、麗子は友達のいない寂しい奴だ。いつも周りに裏切られて、いわれのない誹謗中傷にさらされてきた。俺が出会った頃のあいつは、刺々しくて、頑なで、いつも1人だった。だから、あいつの中で孝太郎は特別なんだよ。自分を犠牲にしても守りたいと思ってるんだ。おまえも、ちゃんと向き合ってやれ」

「分かった。母さんとも麗子ともきちんと話をする」
静かだけれど、凜とした声。

ホッ。
俺の言いたいことを理解してくれたようだ。

後は、麗子に一芝居打ってみるか。
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