氷の美女と冷血王子
「動きからして、何かをしようとしているのは確かなんだ。それも、秘密裏に」

秘密裏って、

「さすがにあの人も、会社の不利益になることは考えていないだろう」
会社一筋、30年以上働いてきた人だ。

「だといいがな」
徹の言い方には含みがある。

「疑っているのか?」
「いや、信用していないだけだ」
「同じことだろう」
「そうか?」

どこが違うって言うんだ。

「今はまだ、鈴森の人間と思っている。好きではないが仲間だ。しかし、もし会社を裏切るようなら容赦はしない」
「徹、お前・・・」

時々、徹のことを怖いと思う。
俺も、冷血だの無表情だのと言われるが、本当に怒ったときの徹は俺の比ではない。
ダメだとわかった瞬間、アッサリ、キッパリ、バッサリと切り捨てる冷酷な男だ。

「そんなに心配するな。もしもの話だ」
「ああ」
久しぶりの徹の本性を垣間見て、俺の方が動揺してしまった。

「それで、お前の話は何だ?」
「ああ、それが」
こんな話の後では言いにくいんだが・・・
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