氷の美女と冷血王子
俺の仕事用フォルダ。
各クライアントや案件ごとにタイトルを付けて整理していた。
もちろん他の管理職と共有しないといけないものもあるし、俺にしか見られないようにガードしたものもある。
一緒に仕事をする彼女にはパスワードも教えていたんだが・・・
とりあえず、パソコンを開いてみる。

あれ?
これは少し整理したなんて言うものではない。

「これって」
無意識に声が漏れた。

「すみません。やり始めたら止らなくなってしまって」

「いや、いいんだ。すごく綺麗に整理されている」
そう言うしかなかった。

きっと新しいプログラムをいくつか入れたんだろう。
昨日までとは全く違うものに見える。

「ただ」

「え?」
彼女の表情が固まった。

「使い方を教えてもらわないと」
これではどこをどう探したらいいのかわからない。

「ああ、すみません」
慌てたように、俺の方に回り込んで一緒にパソコンをのぞき込んだ。

「ここに新しいプログラムを入れましたので、ここを使って検索してください」
「ああ」

「ここは共有フォルダですので、新しい情報があればここに上がってきます」
「うん」

「あと、重要度に合わせて色分けしています。もちろん重要度や、緊急性は設定で変更できますので、その都度調整します」
「うん.」

本当にすごい。これを使えば仕事がはかどる。

「ありがとう、助かったよ」
「いえ」
照れくさそうにうつむいた。

こうやってパソコンを使っているときの彼女はすごく楽しそうだ。
きっとこれが本当にやりたい仕事なんだろうな。
そう思うと、無理矢理秘書をさせていることが、申し訳ない気分になった。
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