『彼の匂いを消す方法』:検索

「最近忙しそうだったから、食事作って置いたり、洗濯物畳んだり干しておいたり……私の行動もうざかったんだろうけどさ」
「うざい? 感謝しかないはずですよ。まあ忙しいを理由に感謝を伝えていなかったなら許せないですね」
「うざかったんでしょ。冷蔵庫の作り置きが一昨日と全く同じ量のまま入ってたの」

 段々と苛々してきた。
確かに彼の仕事が忙しいのは理解している。
 忙しいのは分かってる。忙しくない時はトイレまで着いてきそうなほどべったりしていた。
 でも約束していた日に急遽出張で海外行ったり、終電逃したから会社の近くで泊まるとか連絡来たり、すれ違いが多くなった。
 すれ違いが多くなったから、合鍵をくれた。
「でも合鍵をくれたのって、今考えたらお母さんの代わりを頼まれただけなのかも。洗濯とか料理の作り置きとか。頼まれてないのに……喜ばれるのが嬉しくて勝手にしてただけだし」

 忙しいだろうから、疲れているのに私の相手をするもの悪いのかなって、料理だけ作って帰っていた。
 でも。

「でもさあ、普通、朝からデートって約束していた日に帰ってこないってなんなの。馬鹿じゃないの。私は一体なんなわけ。都合よく帰りを待つだけの女ってこと?」
 一気にグラスを飲み干して、次は何を飲もうかとメニューを掴むと奪われた。

 それでも自称イケメン御曹司とは視線を合わせないまま、テラス席から見える駅前の夜景を見ながら、苛立ちを隠せず本音を吐露してしまった。
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