愛を孕む~御曹司の迸る激情~

「今日は、休んでもいいんじゃないですか?」

 沈黙の後、紗和ちゃんは冷静な口調でそう言った。


 さっきから何度も考えている。こんな状況では、今日一日仕事にならないかもしれないから。でも......

「今日休んだからって、明日何かが変わるわけじゃないし。こういうのって、しばらくは続くものでしょ?」

 そう言いながら、祐一との噂が広まった時のことを思い出した。

「そうかもしれないですけど。同じ部署にいたら、どうやっても目立ちますよ?」

「うん.....」


 考え出したら、頭が痛くなってきた。


 あの中の何人が、私の話を知っているだろうか。あの中の何人が、その話を信じるだろうか。

 そう思いながら、会社のビルに入っていく人々をボーッと眺めた。

「成宮さんも、わざわざ社内の人が泊まってるホテルで、そんなことしなくても。」

 そして、呆れたように言うそんな言葉にも、笑うしかなかった。


「よしっ。」

 すると、突然私の手をぎゅっと握る紗和ちゃん。

「もうこうなったら、しらばっくれるしかないですね。」

 開き直ったようにそう言い、まっすぐに私を見ていた。

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