愛を孕む~御曹司の迸る激情~

「たしかに噂好きの女子たちは、面白がって言いふらしてましたけど、実際見た人は一人だって言うし。見間違いじゃないかって、笑い飛ばしてる人もいたんで!」

「紗和ちゃん......」

「なので、もうそんな話デタラメだって顔して、堂々としちゃいましょ!それしかないです!」

 きっと、至って真面目なんだろう。でも、そんな簡単な話でもない気がする。

 内心そう思いながら、励ましてくれる紗和ちゃんを見て笑みが溢れた。


 するとその時、ポケットに入れていた携帯が、ブルッと震えたのを感じた。

「蕪木さん?」

 携帯を取り出すと、画面には今一番目にしたくない人の名前が表示されていた。

「あのー....」

「ごめん、紗和ちゃん。ちょっと行ってくる。」

 私はそれだけ言うと、無我夢中で走り出していた。急いで入館ゲートを通り過ぎ、エレベーターのボタンを連打し、乗り込む。そして、そのまま屋上まで一直線に向かった。

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