愛を孕む~御曹司の迸る激情~

「おお〜、やっと帰ってきた。どうだった?控え室行ってきたんでしょ?準備できてた?」

「もぉ....すぐ泣くもんだからメイク崩れちゃって。でも、多分そろそろ来ると思う。」

 私は少し息を切らしながら席に着くと、ひな子にそう言い自分の身なりを整えた。


 今日は私の結婚式.....、ではなく、私たちの大事な人たちの結婚式。


「ママッ!!」

 座った途端、ひな子の横から飛び出してきた琴音。パッと顔を明るくして、ギュッと抱きついてくるその子を抱きしめた。

「ごめんね、大人しくできた?」

 そう言って覗き込むと、その顔はどことなく幼い時の私に似ている。琴音は、4年前に私と祐一の間に出来た子供。東北の実家に引っ越してから産まれた、可愛い私の娘だった。


「こっちゃん大人しかったよ?ね?ひなちゃん??ね?」

 "ママに言って"と言わんばかりに、小さい手でひな子の手を握る琴音。思わず、私たちは顔を見合わせ笑ってしまい、そんな愛しい娘に微笑みながら頭を撫でた。


 その時、とうとう音楽が流れ始める。

 急にチャペルはしんと静まりかえり、一瞬にして後ろの方へと注目が集まった。それから、大きな扉は開いたのだった。













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