死んでもあなたに愛されたい



巫女であった彼女と、お目付け役だった男性。

そのふたりがカケオチしたのは、彼女が高校を卒業してすぐのことだ。



しがらみも責任もすべて振り払い、何もかも捨てて、白鳥家から逃げたのだ。



白鳥家の目の届かない、はるか遠い田舎で、ふたりはひっそりと暮らした。


けっして裕福ではない暮らしでも、ふたりは幸せだねと笑い合った。



1年が経ち、ふたりは子宝に恵まれた。

無事に元気な子どもが産まれ、これからもっと幸せになると信じていた。




「それから1ヶ月も経たずして、悲劇は起こってしまったの」




ある日の深夜。

寝静まる家に、怪しい影が忍び寄った。


巫女の能力を求め、白鳥家と対立していた愚か者たちだ。



いち早く気づいた夫が、妻と子の盾になり守ろうとした。

が、あっけなく殺されてしまう。


夫の亡骸を前に、彼女は怒りで我を忘れ――




「禁忌を、犯した」


「禁忌……?」


「言霊の力を使って、人を殺めたの」




彼女は、泣き叫んだ。


『――近寄ルナ!!』




彼女は、怒り狂った。


『――息ヲ吸ウナ!!』




彼女は……呪いをかけた。



『――消エ失セロ!!』



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