死んでもあなたに愛されたい
本家の人間に話すのと、息子同然の子に打ち明けるのとじゃ、わけがちがう。
言えないよね。
どこをどう切り取っても、幸せにはなれないもの。
「俺さ……ぜんぶ知って、ちょっとおどろいたけど、あんまり感情が湧かなかったんだ。冷てぇのかもしれねぇけど」
魁運は左耳につけていた赤いピアスを外した。
褪せてきた花ごと、指の中に丁寧に包んでいく。
「俺にとっては、ここが、すべてだから」
「……そうか」
それがいいことなのかはわからないけれど。
昔話にはなかった幸せは、たしかにここある。
「そうだ魁運、コレを渡そうと思ってたんだ」
「え?」
丸められた魁運のこぶしをそっとほどくと、おじ様は元あったピアスを握った。
代わりに乗せられたのは、新しいお守りのピアス。
「昨晩やっと完成したんだ」
「……ありがとう、親父」
「魁運、新しいのも似合ってる!」
「ソレをつけて、今日はがんばってこい」
前よりさらに華やかになったお守りが、魁運の耳を飾り立てる。
赤と白のマーブル状に染まる布地に、薄紅と銀の刺繍糸で縫われた模様。
一輪の、スイレン。
大切な母親と同じ名前の、清らかな花。
それに詰められた想いこそが、家族の答えなんだろう。