死んでもあなたに愛されたい
だって、ねぇ、おかしいよね?
よーいドン、で鳴るはずだったでしょう?
でも、ほら、見て。
スターターピストルの引き金は、引かれていない。
――バンッ!!
青い空に、白い煙がたゆたう。
「お遊戯はここまでだ」
グラウンドの中央へ侵入してきたのは、白いTシャツを着た、一人の男。
上げられた右手にあるのは、スターターピストル。
……ではなく。
「ほ、本物の、銃……!?」
「きゃああああ!!!」
「に、にげ……っ、逃げろ!」
「警察! 早く警察に!」
「うわあああん……!!」
――バァンッ!!
「騒ぐな。動いたら殺すぞ!」
遠くへ避難し出す一般人に、ダミ声の脅しは効果バツグン。
大混乱に陥るなか、息を殺さざるを得ない。
しかし、とうに、グラウンドの中央にいるのは、あたしと魁運と謎の男だけとなっていた。
「通報しても殺す。携帯いじったヤツから殺す。死にたくなけりゃおとなしくしてろ」
「……束縛が激しいこと」
「あぁ゛!?」
銃口がこちらを向いた。
同時に、魁運が一歩前に出てガンを飛ばす。
あの男、誰に怒ってるの?
……あぁ、あたし?
今の独り言、聞こえちゃった?
「なんだてめぇ!!」
「そっちこそ何? 体育祭中なんだけど、わからない?」
「言ったろ? お遊戯はしめぇだってな」
せっかくのイベントが台無し。
これからがあたしと魁運の本骨頂だったのに。
「だが、俺も鬼じゃねぇ。そこの嬢ちゃんをくれたら、誰も殺さず帰ってやんよ」
は?