死んでもあなたに愛されたい



あたしの右足首と、魁運の左足首。

しっかり固定して、離れないようにきゅっとリボンを結ぶ。




「きつくない?」


「へーき」


「ちょっとー! ふたりとも近すぎー! ひぃちゃんから離れなさーい!」


「…………」




身内からのクレームに、魁運は無反応。


それどころか。




「もっと近くにいねぇと、な?」


「きゃっ、きゃいうん……!」




あたしの腰に手を回された。


いや、練習中何度もしてるんだけど!

それだけじゃなくて!



魁運の頭が肩にもたれかかって、ピアスがあたしの耳に触れてる。


腰を抱く腕も、お腹あたりまで回ってる。



近い。練習のときよりも格段に近い!

本当に体がひとつにくっついちゃいそう!




「カイウンさんのスケベーー!」


「彼氏の特権だっつの」


「ひぃちゃん、隣のオオカミに気づいてーー!!」




あぁ、もうこのまま、スタートしなくてもいいかも……。

オオカミになった魁運に食べられちゃいたい……。




「皆さん、位置について」


「……はぁい」




そういうわけにもいかないか。


渋々1コース目に立ち、魁運の腰あたりをつかむ。

小さな銃が天高くかかげられた。




「よーい」



――バンッ、バン!!




やけに重みのある銃声がとどろいた。



魁運の腰あたりをつかんでいた手をぐっと引っ張り、走ろうとするのを引き止める。


ほかのペアたちも失速していく。



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