死んでもあなたに愛されたい
魁運の背中に隠れ、声色とは相反してガンを飛ばすあたし。
あたしのために怒ってくれてる、いとしのイケメン。
めんどうになってきたのか、真顔を引きつかせる藍色の敵。
はたから見たら、カオス。
「二度と来んじゃねぇ」
「そうだそうだ!」
車に乗り、鏡を確認する兵吾郎にわざと見えるように、しっしっと手で払うジェスチャーをする。
負け犬の遠吠えのようなエンジン音がかかると、古臭い形の軽自動車は走り去っていった。
あっかんべーっだ!
あたしの、彼らの、縄張りで。
好き勝手できると思うなよ。
おとといきやがれ!
「ひとみ、ケガしてないか?」
「うん、大丈夫!」
「わりぃ、助けに入んの遅くなっちまって」
魁運がしょんぼりしてる。
かわいいっ!
もし魁運が来なかったら、それこそ、あたしの手で複雑骨折させてた気がする。
……っていうのは、言わないでおこう。かわいげがない。
「魁運、遅くなかったよ。助けてほしいときに、来てくれた」
「……そう、か? なら、よかった……」
「魁運にはいっつも助けられてるね。あ、このあとの学校でもか。本当にありがとう」
魁運なしでは生きられない身体にさせられてもかまわないよ。
いっそのこと、そうなってしまいたいくらい。
あなたは、あたしのヒーローで。
王子様で。
ギャップあふれる神様みたいだ。