死んでもあなたに愛されたい



おかしい。右肩が動かない。

はずれた? 折れた?


いやな音、いやな感触、それしかわからない。



目の前で、横幅のある男が、にんまり嗤っていた。




「償え! 働け! 役に立て!」


「……っ、」


「おめえは黙って言うこと聞いてればいいんだ!」




ポタリ、ポタリ。
コンクリートの床が濁っていく。


赤い、インク……?


あ。

ちげぇな。俺の、血だ。


どっから出てんだろ。わっかんね。
そこら中、穴があいてるみたいだ。

……まあ、どこでもいっか。


明日から夏休みだ。誰も気にしやしない。


そっか。夏休みって父役も知ってんのか。


だからいつも以上にブチ切れてんだ。

運悪く、契約切れたことと重なって。


そうかそうか。


だとしたら。




「親孝行しろよ! なあ! 能無しはそうやって生きてくしかねぇんだよ!!」


――ガリッガリ! ドンッッ!!




ちょっと、やばい、かも。




「聞いてっかぁ? 返事は!?」


「ごふっ……ぁ、ぅ、」


「あぁん? 聞こえねぇなぁ!?」




――シュッ……バシンッ! ベリッ!



俺、耐えきれっかなあ?

今日だけでこの血の量はさすがにきちい。


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