死んでもあなたに愛されたい


にっこり笑う女の子の双眼は、ちっとも笑っていない。

ほこりやごみを巻き込み黒ずんだ風が、男の肌を、血色を、攻めていく。




「みーんな、待ってるよ」




まがまがしく歪んだ、あの透けた瞳に、何が見えているのか。


それが、きっと、本物の地獄なのだと。

わかりたくなくても、わかってしまう。




「ねぇ、さあ、ほら」


「いや……いやだ……お、オレが、わるか、」


「わっ!!!!!!!!」


「ッ!?」


「……あ。……あーあ、気絶しちゃった?」




父役って、あんなマヌケだったっけ?

突然の大声だけで気を失って。


……なんか、弱っちい、な。




「お兄さん」


「え、」


「今のうちに、行こ?」




俺のほうに駆け寄って、手を差し伸べる女の子。

さっきまでの恐怖はどこにもなかった。




「かなっちまうなんてな……」


「え? なに?」


「いや、なんでもない」




俺も、弱すぎただけの話。




「ありがとな」




女の子の手を取ってほほえむと、俺以上の笑顔が返ってきて、なんとなく目頭が熱くなった。


< 327 / 329 >

この作品をシェア

pagetop