死んでもあなたに愛されたい
にっこり笑う女の子の双眼は、ちっとも笑っていない。
ほこりやごみを巻き込み黒ずんだ風が、男の肌を、血色を、攻めていく。
「みーんな、待ってるよ」
まがまがしく歪んだ、あの透けた瞳に、何が見えているのか。
それが、きっと、本物の地獄なのだと。
わかりたくなくても、わかってしまう。
「ねぇ、さあ、ほら」
「いや……いやだ……お、オレが、わるか、」
「わっ!!!!!!!!」
「ッ!?」
「……あ。……あーあ、気絶しちゃった?」
父役って、あんなマヌケだったっけ?
突然の大声だけで気を失って。
……なんか、弱っちい、な。
「お兄さん」
「え、」
「今のうちに、行こ?」
俺のほうに駆け寄って、手を差し伸べる女の子。
さっきまでの恐怖はどこにもなかった。
「かなっちまうなんてな……」
「え? なに?」
「いや、なんでもない」
俺も、弱すぎただけの話。
「ありがとな」
女の子の手を取ってほほえむと、俺以上の笑顔が返ってきて、なんとなく目頭が熱くなった。