死んでもあなたに愛されたい
「おかしな話よね。男が狂ってんのか、女がうそついてんのかわからないけど、死神――カイのことを血眼になって探してるそうよ」
「……そう」
「厄介なのは、その族の裏にヤクザがいるってうわさがあることなの。だから念のため、裏取りできるまで避難させようと思ったんだけど……」
「…………」
「カイはどこ行ったのかしら」
暴走族の総長だか、ヤクザが味方だか知らないし、どうでもいい。
くだらない恋愛沙汰に、あたしの大切な人を巻きこまないでよ。
魁運を振り回すのは、あたしだけでいい。
「行かなくちゃ」
「行くってどこに」
「魁運のところへ」
ざわり、と。
急に冷えこんだ空気が、夕焼けの熱をも食らう。
体感温度が4度下がった。
「当てはあるの?」
「大丈夫。教えてくれる」
「誰、が……」
髪の毛を引っ張るように微風が右方向に吹きすさぶ。
風の行く先。
右へ、指差した。
「あっちにいるって」
「なんで……わか……」
「見ればわかるんです」
「……どういう……?」
「行きましょ?」
あたしの瞳は、ふつうじゃない。
そこに映し出される世界は、いつだって、黒くぼやけてる。
目の表面には反映されない色が、目の前に、たしかに生きている。