死んでもあなたに愛されたい
こぞって目的地を示す、不透明な黒。
人や動物の形をしていながら、影も精気も、足もない。
生き物ならざるもの。
生き物であったもの。
それらをヒトは――幽霊、と呼ぶのでしょう。
きれいか、きれいじゃないかと問われたら、きっときれいじゃない。
けれどこれが、あたしの世界。
生きてようが死んでようが、この目には見えてしまうだけ。
――ドゴッ!
――ガンッ!
繁華街の手前のうす暗い路地。
鈍い音が立て続けに反響している。
「……ここ、みたいですね」
「いやな予感しかしないんだけど」
「奥に行ってみますか」
「えっ、ひとみんも行くの? 危ないわよ」
マユちゃん先輩の気遣いをあしらい、ズンズン先に進んでいく。
路地の突き当たりに、いくつかの影がうごめいていた。
ポタリ。血がしたたる。
真ん中にいるのは、まぎれもなく、魁運だ。
こんなうす汚い場所でも、あの金髪はきんきらきんに華やいでいる。
「あちゃー。やっぱもう殺っちゃってたかあ」
「ですね」
「ひとみん、あんまり見ちゃだめよ」
「魁運~~!」
「ガン見ね!?」
見逃せるわけがない。
彼の戦う勇姿を、間近で拝めるんだよ!?
まばたき厳禁。脳内フォルダーに永久保存。