策士な課長と秘めてる彼女 ~出産編・育児編~
「ご息女は悪いことをしたとは少しも理解していらっしゃらないようですね。まあ、こちらはただ謝って欲しい訳じゃない。靴は新しいものを購入すればすむことですが、傷つけられた娘の心はもとには戻らないんですよ。巻き込まれた玲音くんも同様だ」

「申し訳ありません」

陽生の言葉に5人の親が揃って頭を下げた。

女子5人のうち、3人は泣きながら

「「「ごめんなさい」」」

と謝ったが、後の二人は納得いかないというように渋々と頭を下げただけだった。

「無駄な時間だったようですね。私達の真意は、このあとのPTA総会で明らかにさせて頂きます」

自分の子供すらコントロールできない親達に呆れたのか、陽生はため息をついて椅子から立ち上がった。

蘭ママも同様だ。

「行きましょう、玲音、美暖ちゃん」

蘭が玲音と美暖を促して、陽生とともに退室しようとした時だった。

「ま、真島さん。工場の立ち退きの件はどうか・・・お父様に」

不貞腐れた女子児童のうちの一人、田中芙美の父親が大きな声を出して陽生を引き留めた。

「この期に及んであなたは仕事の心配ですか?どうやらあなたは父親業というだけではなく社長業にも向いてはいないらしい」

田中は地元の電気機器製造会社を運営している社長だった。

陽生が

『明日の参観日の後の面会時まで謝罪は不要』

と、校長先生を通じて5人の女子の親達に念を押していたにも関わらず、それを無視して真島家と真島本家に電話攻撃をしてきたのはこの田中社長だった。

「ご自分の保身ばかりを気にして、物事の本質を見謝ると足をすくわれますよ」

小バカにしたような冷徹な視線を向ける陽生パパは、家庭で見せる日葵バカというだけのボンクラ社長と同一人物には見えなかった。

゛パパ、恐るべし゛

美暖は、少々陽生パパを侮っていたかな?と反省して身震いした。

< 75 / 85 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop