だから、言えない
第六章 村薗 優





「ねぇねぇ、それ何?」
「これ?」
「うん。上を歩いてたら、
音楽が聞こえてきて、
すごく上手だったから、
どこから鳴ってるのか探してたの」
「そんなうまくないけど…」
「君が吹いてたの?」
「うん」
「それ、見せてー」
「いいよ」

そうだ、あの日は父さんに怒られて、
むしゃくしゃしてたから、
自転車に乗って、
少し離れた河の
橋の下でトランペットを
吹いたんだった。

「これって、ラッパ?」
「うん、トランペットっていうよ」
「ふぅん。
さっきの曲、吹いてみて」
「うん、いいよ」

あのとき、何を吹いたっけ?
多分その時ちょうど練習してた
マーチングの曲だったかな?

「うっわぁ!
すっごい!
私、感動した!」
「そんな…
ありがとう」
「ねぇ、名前は?
どこ小なの?」
「村薗優。
西小の五年だよ。
君は?」
「私は、琴香。
北小だよ。三年生」
「ことか、かぁ…
じゃあ、ことちゃんかな?」


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