だから、言えない

「優しい中学生のお兄さんが、
声をかけてくれて、
虫をとってくれたんだよね」

この話を聞いていた村薗さんが、
よかったね、と優しく笑った。

「でも、そのお兄さんが虫をよく見てくれたら、
シールだったんです」
「シールって?」

佐山さんまで、
しっかりとこのくだらない話を聞いていて、
食いついてきた。

「手帳とかに貼る、
小さい正方形のシールです。
透明のシールに黒の線で
こいのぼりの絵が描かれているやつだったんです」
「そんなの虫に見えなくないですかぁ?」

あたしが言った。

「それが、そのシール、
くるまってたから、
黒い線が重なって虫の手足に見えたの」

うそくさ。

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