値札人間
普通、学校に来て友人の額に変な数字が書いてあったら、なにかしらの反応があると思う。


でも、今のところなにか反応を見せている生徒は1人もいないのだ。


考えている内に、昔読んだ小説を思い出していた。


主人公は交通事故で生死を彷徨い、その後日常生活を取り戻す。


しかし、死の淵に立たされたことで他人の死を予見する能力を身につけるのだ。


それは相手が残り何日生きることができるかが、数字として見えるものだった。


それを思い出した瞬間、全身に寒気が走った。


背中を無数の虫が這っているような強烈な不快感に一瞬吐き気がこみ上げてくる。


もしもあたしが今見えているものが相手の寿命だったとしたら?


あたしはアマネの額に書かれている数字を思い出して、震えた。


9645。


アマネの寿命は残り9645日?


40代の数学の先生よりもずっと短いことになる。


いや待てよ?


先生の数字は1218921。


これだと先生は後300年以上生きることになってしまう。
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