値札人間
イツミはすっかり浮かれてしまっていて、頬も赤く上気している。


「1度クラスで1番の価値になるとね、その後価値が下がることはないんだよ」


「そうなんだ!?」


「うん! だから、イツミの価値は不動の1位ってこと! これから先どんなことをしても、イツミは常にトップなんだよ」


あたしは嘘を重ねる。


罪悪感なんて少しも感じなかった。


「そっか。なにをしても……か……」


イツミが悪だくみをする時のような、いやらしい笑みを浮かべる。


「いいなぁイツミは。うらやましいなぁ」


「えへへ。いいこと教えてくれてありがとうアンリ」


イツミは上機嫌にそう言うと、あたしを置いてさっさとクラスへ戻って行ってしまった。


これからイツミの素行は更に悪化していくだろう。


数値はどんどん減っていき、あたしのライバルではなくなるのだ。


「バーカ」


あたしはイツミの後ろ姿へ向けてそう呟いたのだった。
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