値札人間
「別になにも書かれてないよ?」


「本当に?」


「本当だよ。どうしたのアンリ?」


「……ううん。なんでもない」


きっとアマネは嘘はついていない。


むしろ、あたしの額にラクガキがされてあったら、まっさきに教えてくれるだろう。


やっぱり、あたし以外の人間にはこの数字が見えていないのだ。


それならあたし1人が右往左往しても仕方ない。


誰になにを言っても信じてもらえないだろうし、黙って、気がつかないフリをしているのが一番賢い。


「それより、アマネは数学の課題できた?」


気を取り直すように聞いた質問に、アマネは泣きそうな顔になってしまったのだった。
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