値札人間
いつもならこの時間が嫌で嫌で仕方なくて、現実逃避のためにこっそり文庫本を取り出して読んだりする。


けれど今日は答案用紙が戻ってくるのが楽しみでしかたなかった。


自分のノートを広げ、さっきのテストで使った数式を思い出しながら照らし合わせていく。


うん、間違っていないはず。


後は計算が合っているかどうかが問題だけど、それは大丈夫そうだ。


ノートを読み返すことで更に自身がついたとき、採点を終えた先生が教卓の前に立った。


「よし! それじゃ名前を呼ばれたら取りに来い」


先生の言葉にあちこちからブーングが起こる。


テストなんて返って来なくていいと、つい一週間前のあたしなら思っていただろう。


でも今は違う。


すぐにでも点数を確認したくて、うずうずしてしまう。


そしてようやく名前が呼ばれ、教卓へ向かった。
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