【短編】恋愛モルモット~恋の価値観~


「別に、豊富な恋愛経験から学んだ計算を知りたい訳じゃない。

俺が気になったのは、里咲の恋愛感だ。

里咲があんまり大切そうに『先輩』との事を話すから……それを知らない自分が本当に損してるように思えただけ」


宮城はゆっくりとあたしに視線を移して……そして、小さく微笑んだ。

初めて見るような宮城の微笑みに、あたしはどう反応したらいいのか分からなくて……ぎこちない笑顔を返すのがやっとだった。


だって……すごく穏やかに、優しそうに微笑むから。

そんな顔、教室じゃ見た事なかったから。


少しだけ、ドキドキした。

イケナイものを見てしまったような、そんな感じ。

隠してあった宝物を見つけてしまって、だけど誰にも言いたくない、内緒にしときたいような……そんな感じだった。

あたしだけが知ってる、すごく大切なモノ――――……

……ん? 大切なモノ?? いやいやいや、おかしいでしょ。


自分の思考にびっくりして、背中を悪寒が走る。

ぶるっと身体が震えて、あたしは自分の両肩を抱き締めた。


「寒い? 里咲は薄着過ぎだろ。日中は暖かくたってもう10月だ。ブラウス1枚なんかじゃ冷えるだろ」

「……そう言う宮城は9月半ばくらいからカーデガン着てたよね。寒がりなの?」

「ああ。苦手なんだ、寒いのは」


そう言って噴水を見る宮城がやけに可愛く見えてしまって、また1つ、あたしはイケナイものを発見してしまった気分になる。

白いYシャツの上に紺のカーデガンを纏った宮城の横顔が、少しだけ幼く見えて……あたしはバレないようにこっそりと笑みを零した。


見つめる先の噴水の水の勢いが強まる。


「夏だったら脚くらいつけられたのにね」

「……常識を考えろ。子供だから許される行為であって、高校生がする事じゃないだろ」


返って来た宮城の答えはやっぱりいつも通りで。

だけど、なんだかそれさえも楽しく思えてしまった。



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