不本意ながら、極上社長に娶られることになりました
暴走した独占欲



 雫で濡れるガラスの向こうには、傘を差した人々が足早に通り過ぎていく。

 グラスの中の氷をマドラーで突いている私に、凛香が「つぐみー?」と横から覗き込んだ。


「どうしたの、全然飲んでないじゃん?」

「あー……うん、ちょっと」

「何、体調悪いの?」

「いや、体調不良までいかないけど、ちょっと午後から偏頭痛がね」


 本当は頭痛なんてしてないのに、口から出まかせ。

 いや……ある意味、ずっと頭痛気味なのは本当かもしれない。

 お昼休み、凛香から【今晩、暇?】と連絡が入ってきた。

 いつもご飯の約束は前もってしているのに、今日は珍しく当日に予定を聞かれた。

 メッセージを見た時は、断るという選択一択だった。

 だけど、こういう時こそお酒の力を借りるべきなんじゃないかと思い直し、行くと返信をした。

 のに……私の思いとは裏腹にお酒は全然すすまない。

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