不本意ながら、極上社長に娶られることになりました


 勢いよく開け放たれる茶室の引き戸。

 そこに現れたのは、慌てた様子の千晶さんの秘書の方と、その制止を振り切って踏み込んできた桜庭さんだった。

 桜庭さんは入ってくるなり、そこにいた私をキッと睨み付ける。

 そして千晶さんに視線を移し、また訴えかけるように「どういうことなの?」と声を張り上げた。


「どういうこととは?」


 そんな興奮状態の桜庭さんに対し、千晶さんは全く動じず落ち着いた声で対応する。

 ちらりと見た千晶さんの表情は、口元には微笑を浮かべているものの目が全く笑っていなかった。


「お父様から聞いたのよ、うちとの契約は取りやめにするって。今更そんなことして、千晶の会社だって困ることになるわよ!?」


えっ……?


「うちは痛くも痒くもない」

「なっ、なんですって!?」

「なんだ、突き放したら脅しにかかるのか。それならうちも黙ってないぞ?」


 余裕たっぷりの千晶さんに反論されると、桜庭さんは悔しそうに押し黙ってしまう。

 また私を鋭く睨み付けた。

< 132 / 135 >

この作品をシェア

pagetop