不本意ながら、極上社長に娶られることになりました


「失敗した……」


 今まで通りの感覚で急いで買い物をしたところ、〝お買い得〟という表示を見つけてはかごに商品を入れていた。

 いつもそうやってお得な物を購入し、買ってきた品で何が作れるかを考えるのが私の料理のスタイル。

 だけど、そんな庶民な食事スタイルでは駄目だとハッとする。

 しっかりとメニューを先行して考え、その上で買い物をして料理をしないといけないと気付く。

 でも、千晶さんが何が好きなのか、結局まだ教えてもらってない。

 私の思うところ、日常的に極上なものばかり口にしているはずだから、手料理だって手の込んだものを出さないと駄目なはずだ。

 今晩は買ってきてしまった材料でなんとか総力を結集して作るしかないけど、今日中に好きなものを聞いて、明日以降は慎重に買い出しもしようと思う。

 千晶さんが出張で不在の間、そのうちの半分は実家に戻っていた。

 母親の手伝いで帰っていた部分もあるけれど、まだ自分の現実と受け入れきれていないこの広いマンションで、ひとりきりで過ごすというのがどうも落ち着かなかった。

 キッチンを使っても、リビングでテレビをつけてみても、ベッドに入ってみても、どうもそわそわしてしまう。

 慣れるまで仕方のないことかもしれないけれど、まだしばらく時間はかかりそうだ。

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