不本意ながら、極上社長に娶られることになりました

「……よし。とりあえず完成」


　帰宅してすぐにキッチンに立ち、急いで料理に取り掛かることおよそ一時間……。

　買ってきた材料で出来上がったのは、鮭の煮つけ、肉包み蓮根の天ぷら、きのこの和風サラダとみそ汁。それに、ご飯はたこの炊き込みご飯にした。

　少しでも見栄えがするように、煮つけや天ぷらにはインゲンや飾り切りしたニンジンを添えたりしてみる。

　食事の準備を終えて調理器具をシンクで洗っていたところで、玄関に人の気配を感じ取った。

　慌てて手を拭き、エプロンをかけたまま急いでキッチンを出ていく。

　ちょうど玄関を上がったところの千晶さんと鉢合わせて、思わず姿勢を正して頭を下げていた。


「おかえりなさい。お疲れ様でした！」

「居たのか……」


　顔を上げると、千晶さんはどこか驚いたように私の顔をじっと見下ろしている。


「あ、はい……食事の用意をしてました」


　帰るという連絡に、お待ちしていますと返事をしたはず。

　それなのに、私が出てきたことに意外そうな表情を見せられ小首を傾げたくなった。