不本意ながら、極上社長に娶られることになりました


 タオルドライした髪にトリートメントをなじませ、ドライヤーで乾かしていく。

 洗面台の端に置かれたデジタル時計を見ると、十時半をまわっていた。

 入浴後の身支度を整え、水でも飲もうと浴室を出てキッチンへと向かう。


 千晶さんは……お仕事かな?


 静かなリビングへと入ると、薄暗く照明の落ちた部屋の中、千晶さんが景色でも眺めるように窓辺に一人佇んでいた。

 シャワー後のTシャツにスウェットパンツという格好を見て、不意にドキリとする。

 初めて見る、スーツではない完全プライベートな姿。

 セットしていない洗いざらしの髪を見て、ハッと重大なことに気が付いた。


 そうだ……この後のこと、すっかり忘れてたけど……。


 寝るのはどうするのか問題。

 千晶さんの出張が入って、この住まいで共に生活するのは延期されていたから、そのことをすっかり忘れていた。

 どうしようかと思いながらキッチンの入り口で突っ立っていると、千晶さんが夜景から振り返る。

 目が合って、思わず「あっ」と変なリアクションを取ってしまった。

 近づいてくる千晶さんを見たまま、固まったように動けなくなる。

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