春の闇に連れ去らレ

会場まで緤を車で運ぶこともあった。でも、あたしが喪服を着た覚えはない。

「ネックレスもしとけ」

ワイシャツを着ながらリビングに来た緤から箱が投げられる。それを受け取って、開ける。
黒い真珠が並んでいる。

閉めた。

「これ、買ってきたんですか?」
「当たり前だろ。なんで俺が女物のネックレス持ってんだよ」

安物のワケがない。緤はファストファッションと偽物をとことん嫌っている。
この喪服もどこの物かはよく分からないけれど、量販店のものではないだろう。

これ、あたしが使った後に誰か使う予定でもあるのか。

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