春の闇に連れ去らレ

ふらりとどこかへ行ってしまう。

その背中を見て、お惣菜を選んでから捜すことに決めた。あの男は三歳児ではないのだから、迷子にはならないだろう。

鶏の唐揚げと牛肉コロッケを持って、冷凍食品のコーナーへと行く。
アイスの前に緤はいた。

カゴの中にお惣菜を入れると、緤が視線を動かす。

「食べたいアイスが、あったんですか?」
「別に」
「それ、流行ってるんですか」
「あ? なにが」
「いえ、カゴありがとうございます」

取っ手を持つと、引き戻される。

「持つ」
「え、どうしたんですか……」
「引いてんなよ」

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