春の闇に連れ去らレ

小学生か。

「緤さん、洗わないんですか?」

扉から顔を出して、後ろ姿に尋ねる。ぴたりと動きを止めてこちらを振り向く。

「……洗う」

洗うんですか。 

緤は首の後ろを掴みTシャツを脱いだ。

「え、なぜ、脱ぐ」
「濡れた」
「じゃあもう脱ぐ必要ないですよね、ねえ?」

主張するも、敗れる。

そしてあたしはまた、呼び止めたことを後悔するのだった。

「目にシャンプーが入ったんですけど!」
「うっせえな……」
「なんですか、え、なんですか?」

お湯をかけられて、幕を閉じる。


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