春の闇に連れ去らレ
酒に酔わず君に酔う。

腕が完治した頃、シュウが家に来た。麻と共に、酒を持って。

「どうしたんですか」
「お中元。クソ重かったー」

はー、と言いながら麻がその酒をテーブルに下ろした。

「宴会で出せよ」
「その余りだ」
「余らせんなよ……」

あたしの隣に座っている緤が呆れた顔をする。

料理に使える酒はないか、と立ち上がると、緤も一緒に立ち上がった。

「絲ちゃん、欲しいものあんの?」
「純米酒ある?」
「これ、一番高いやつだ」

シュウが一番高いらしい純米酒を寄越す。

酒にはあまり詳しくないので、高いのなら美味しいのだろうと思い、受け取った。

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