消えた卒業式とヒーローの叫び



 自分の思考回路がはっきりしたのは、一本の着信音が鳴ってからだった。

 その時初めて、私は自室に戻って、現実から逃げるようにアニメーションを制作していたのだと知った。ほとんど無意識だった。

「も、もしもし?」

 私は食らいつくように応答ボタンを押して、スマートフォンを耳に当てる。

「永遠? お母さんだけど……」

「お母さん! 日彩は、日彩はどうなったの!?」

 母と認識した私は、間髪入れずに問い詰めた。暖房を付けることも忘れた冷蔵庫の間を、甲高い声が引き裂く。

 耳元で聞こえる母の声は、いつもより低く、重かった。


「一応呼吸困難は治まって、意識も戻ったわ。でも手足の感覚麻痺というか、痺れや震えが治まらなくて立ち上がれないらしいの。だから今日は入院して、検査をすることになったわ」


 肺に留めていた空気を、はっと吐き出し、その後は肩で呼吸をする。母の言葉を聞くまで、酸素を循環させることすら脳内から欠乏してしまうほど、日彩のことで頭がいっぱいだった。


「お父さんも会社から直接こっちに来てる。あとでお母さん、一旦着替えとかを取りに帰るけど、今夜は病院に泊まるわね。永遠なら大丈夫でしょう? でも戸締りはしっかりするのよ」


 私は安心からか、また自然と頬に涙を流していた。ここ最近、私は一体何度泣いたことだろう。そのせいで声が喉に詰まり、私は伝わらないと理解しつつも、首を縦に深く振った。


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