暁の夕暮れ ~春の章~
「あぁ、すまない。あそこまで経歴が完璧な人はそうそういないからね、即合格って訳」
「は、はぁ……ありがとうございます」
喜ぶべきなのか、どうなのか…。
「で、ここのアイドル達にはもう会った?」
「いえ、まだです」
「そうか。神原かんばら君、今すぐ皆を集めて皐結君に紹介してくれ」
「了解しました」
お姉さん──神原さんは、こくんと頷いた。
「これから、仲間として、ライバルとして。切磋琢磨せっさたくましていってほしい。よろしく頼む」
「はい、こちらこそ」
やっと分かった。
この人は、この事務所──瀧之沢たきのざわ芸能事務所の所長なんだ、って…(いまさらか)。
えっ、どうしてここにいるのかって?
それは、私が願書を送ったら、合格してしまったから…。
今から5ヵ月前の、あの日…。