暁の夕暮れ ～春の章～

「私、女優になりたいんです！」

　そう叫んだ、高校3年の三者懇談。

　…って言っても、親が両方ともいないからほとんど個人懇談なんだけど……

「いいんじゃない？劇部なんだし」

「そ、そう思いますか…？」

　先生は頷く。

「あれなら、願書作る？」

「えっ？いいんですかっ？！」

「ええ」

　私はこのとき、まだ知らなかった。

　この願書が通って、事務所入りすることになるなんて…




　　　　　　　＊　＊　＊




「皐結さん、アイドル達が集まったから…行きましょう」

「あっ、はい」

　私は神原さんの後ろについていく。

「…ここに所属している人は男子が5人、女子があなたを含めて3人」

　え、男子の方が多いの…？

「あぁ、この部屋よ。皆、入るわね」

　神原さんはドアを開ける。

　それに続いて、私も部屋に入る。

「はい、じゃあ自己紹介して」

「…誰から？」

「菜央から」

「あー、うん。分かった。睦月菜央(むつきなお)です。よろしくお願いします」

「井山涼(いやまりょう)です」

「春野咲夜(はるのさくや)です、よろしくお願いします」

「霜瀬秀也(しもせしゅうや)だ」

「永浜怜(ながはまれい)です」

「葉垂蓮(はたるれん)だ」

「Swing beatスウィングビートのセンター、歌込冬麻(うたごめとうま)です。よろしく」

　すいんぐ、びーと…？

　どこかで、聞いたような…

「Starry sound(スタァリイサウンド)の黒栖星楽くろすせいらです」

「同じく、辰川音葉(たつかわおとは)です」

「…じゃあ、ついでに。神原萌花(かんばらもえか)よ。よろしくね」

「…あっ、皐結ことねです。よろしくお願いします！」

　私は頭を下げる。

「うん、よろしくね」

　冬麻さんがニコッと笑って答えてくれる。

「じゃあさっそく、お仕事しましょう」

「えっ、いきなりですか？」

「大丈夫よ。行きましょう」

「…はい」

　私は皆さんに向かって頭を下げ、神原さんの後を追った。





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