暁の夕暮れ ~秋の章~

「……僕」

 僕はふと思いつき、声をかけた。

「何?咲夜」

「僕にことねの看病…任せてもらってもいいかな…?」

『え、なんで?』

 異口同音で返ってきた言葉に、内心焦りながらも口を開く。

「なんか、分かんないけど…今回は僕が、ことねに恩返ししたいんだ」

 一瞬、沈黙が落ちる。

 …僕らしくなかったかな…

「……、いいよ」

「恩返しなら、俺と涼は終わってる。ね、涼」

「くっつくの、やめてくれない?」

「質問の答えじゃないでしょ、それ…」

「ま、他の人は後々ね」

「うん」

「じゃあ後は任せた。それでは一同、撤収(てっしゅう)っ!」





 みんなが出ていった部屋には、僕とことねの2人が残った。

「……ことね…すぐに治るように、僕も頑張るからさ」

 ことねの髪をそっと撫で、再び口を開く。

「ことねもやられないように、頑張ってね…」




       * * *




「まだ、起きないかぁ……」

 発熱から、丸2日。

 ことねの熱は少し下がったものの、まだ目は覚めなかった。

「いつになったら、起きてくれるんだろう…」

「………う…うっ…」

「……ことね…っ」

 うなされるなんて、可哀想だな…。

 僕は気の毒に思う。

 すると、濡らしたタオルがことねの額からずり落ちる。

「あ……」

 僕はそれを拾う。

「もうぬるくなってる…」

 また水で濡らしてくるか…。

 そう思い、立ち上がる。
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