愛妻御曹司に娶られて、赤ちゃんを授かりました
帰宅して着物を脱いでシャワーを浴びる。
嬉しいのに、どこか胸が空虚。
夢にまで見た佑のお嫁さんになるのに、今日は幸せな婚約式なのに、こんな気持ちになるなんてなあ。
これがマリッジブルーかしら、なんてちょっと笑ってみる。

今日会った佑はやっぱり私を兄が妹を見るみたいな目で見た。子どもの頃からそうなんだもの。よくわかってる。佑は私を兄みたいな気持ちで心配し、大事に想ってくれている。
でも、それって肉親への気持ちなのだ。

兄と妹は夫婦になれるものなの?
どこかでこの親愛が恋愛に変わるものなの?
私は最初から恋愛だった。私はずっと佑が好き。だけど、佑は違う。
今日会って、そのことがはっきりしてしまった。これで夫婦になれるのかしら。

シャワーを浴び終え、髪を乾かし、リビングに戻る。疲れた疲れたと言い合っていた両親は、ソファでお茶を飲んでいる。

「私もお茶がほしいな」
「自分で淹れなさいな」

渋々自分でお茶を淹れ、勢いでテーブルに載っていたどら焼きをふたつ食べた。

「咲花、あなた!あんなに料亭でごはん食べたじゃない」

確かに料亭の懐石は残さずに食べたけど、気持ちが空虚だとなんだかお腹が空くのだもの。
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