愛妻御曹司に娶られて、赤ちゃんを授かりました
「その方が悲劇だと思わない?いきなり知らない人に嫁がされちゃうなんて笑えないでしょ」

確かに傑とも俺とも破局すれば、咲花の父親の性格上、すぐに次の見合いがセッティングされてしまうだろう。榛名家とうまくいかなかった娘は片づけてしまおう、くらいには思う人だ。そういうドライな一族主義のところはうちの父親と価値観がよく似ている。

「佑が嫌じゃなければ、このまま結婚して。私、安心して暮らしたいよ」

そんなふうに言ってくれる咲花に感謝して、俺は頭を下げた。

「わかった。惑わせるようなことを言ってすまない。俺は咲花みたいな嫁が来てくれるなら、これ以上望むべくもない」
「褒めても何にも出ないぞ~」

咲花が茶化して笑った。

「ランチに行こう!お腹空いちゃった」
「ゆうべ、連れて行こうと思っていたイタリアンはまた今度」
「次の週末にしましょ。またショールームに行かなきゃならないんだし」

俺の婚約者はどこまでも明るく理想的な女性なのだ。
俺にはもったいないくらいの。


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