そしてまた、桜はさきほこる
そして同じころ、るみとの情報収集の結果、先輩がサッカー部に所属していることが分かった。


バドミントン部の部長を務めていた私は、なかなか放課後に時間をとることができなかったが、それでも練習の合間を縫っては、グラウンドに足を運び続けた。


「中西、ドリブルで上がれ!」


「はい!」


ドリブルをする先輩をグラウンドの端からじっと見つめる。


ディフェンダーの選手を二人、三人と勢い良くかわしシュートの態勢に入る。


ああ先輩が蹴り損ねたボールがこっちに転がってきたりしないかな。


その淡い期待もむなしく、先輩は華麗にボールを蹴り上げ、ゴールネットを揺らした。生暖かい風が私の長い髪を揺らす。


結局、私のもとにやってきたのは、舞い上がった砂の残骸だけだった。


「圭吾、ナイスー!」


チームメイトと笑顔でハイタッチを交わす先輩。


いくら手を伸ばしても届かない。それでも、全力で部活に取り組むかっこいい先輩を見ている時間が、すごく幸せだった。
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