電話のあなたは存じておりません!
 そうは言っても、相手が私を知っているのに私がこの彼を知らないのは……。

 不気味すぎる。

 ーーあ。

「ストーカー?」

 思わずそう呟いていた。

『ああっ、いや。そんな怪しい者じゃないです、……って言うか、ごめんなさい。気持ち悪いですよね。もう掛けないので、おやすみなさい』

 三度の不通音を残し、スマホは待ち受け画面に戻った。

 一方的に話をされて、一方的に電話を切られた。

 ーーなにこの人。意外と小心者?

「Who are you?」と呟いてからまた独りごちる。

「お前は誰だ?」

 ベッドから身を起こし、クローゼットの扉を開けた。

 目的となるのは高校時代の卒業アルバムだ。難なくその一冊を引っ張り出し、またベッドに座った。

 綺麗に印刷された分厚いページを捲り、高三の自分を見付ける。

 一体何度漏らしたか分からない溜め息が浮かんだ。

 正直、高校時代はロクな思い出しかない。三年生はそうでも無かったが、とにかく二年が酷かった。

 高二の頃、私は単純に言って虐められていたと思う。
< 9 / 36 >

この作品をシェア

pagetop