続・電話のあなたは存じておりません!

 頭に或叶さんを思い描き、私は親指を動かした。

【ごめんなさい、寝てたら電源切れてました。今日、大丈夫です】

 送信の三角マークをタップすると、すぐに既読が付き、返事が送られてくる。

【そっか。ゆっくり休めてるなら良かった】

【それじゃあ今夜また迎えに行くね】

 彼の言葉を文字で確かめ、キュウと胸が締め付けられた。

 できるだけ可愛いらしい了解のスタンプを選び、送信した。

 私は颯爽と起き上がり、洗面所に向かう。

 洗顔をしてから目元の化粧を念入りに施し、いつも通りに出勤する。

 *

「んん? なんか朱音、今日アイメイク派手じゃない?」

 制服に着替えている時、由佳が不思議そうに私の目を見つめた。

「あっ、ほんとだー。朱音ちゃん、そういうメイクも可愛いね?」

 沙奈江がいつものキャピキャピとした口調で屈託なく笑う。

「どうしたの? なんか良い事でもあった?」

 ーーむしろ逆。

「ちょっとね。気合いを入れようと思って」

「へぇ、……てか、あ! 今日だよね? 朱音たちの一カ月記念」

「あ、うん」
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