続・電話のあなたは存じておりません!
 いつもなら飛びついて回線を繋ぐくせに、今日は怖くて出られない。

 ーーどうしよう。別れの電話かもしれない。

 鳴り続けるスマホを不安一色で凝視しながら、出るか出ないかの判断がつかない。

 床に正座をしたまま液晶を睨んでいると、やがて音楽は途切れ、ロック画面に不在着信のバナーが残る。

 ハァ、と肩を揺らしてまたため息をついた。

 彼からの電話を初めて無視してしまった。

 右側面の電源ボタンに指で触れ、グッと押し込んだ。暗いディスプレイをフリックして電源を落とした。

 これでもう電話は掛かってこないし、別れも告げられない。

 私は或叶さんと別れない。別れたくない。

 昨日実家に帰り、昔の彼をようやく思い出せたのに、ここで終わりになるなんて冗談じゃない。

 或叶さんに誤解されているのなら、それを解いてちゃんと私を見て貰う。

 あんな女の人に負けない、彼だけは誰にも渡さない。

 沈み切っていた気持ちを無理やり持ち上げて、私は冷蔵庫を開けた。

 *

 翌日。落としっぱなしだったスマホの電源を入れると、メッセージアプリに彼からのメールが届いていた。

【ごめん、電源切れてる?】

【明日、会いたいんだけど。都合つくかな?】

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