一夜の艶事からお見合い夫婦営みます~極上社長の強引な求婚宣言~

高く腕を上げて、軽く伸びをしながら高木が近づいて来る。


「実花子ちゃん、その話はまたあとで」


コソッと耳打ちをすると、白鳥は自分の両頬をペチッと軽く叩いて気合を入れた。

拓海がヤキモチなんて本当だろうか。『嫌いになった』という拓海の言葉と、『実花子ちゃんを守るために別れを選んだ』という白鳥の言葉がぐるぐる頭の中を回る。


「実花子ちゃん、やるよー」


高木に呼ばれて、そちらへ向かいながら気持ちはうわの空。拓海の機嫌の悪さの理由が、本当に白鳥の言うとおりだとしたら……。実花子を思って別れたということだろうか。

でも……。
そこでどうしても思い出すのは、遊園地での拓海の様子だった。

実花子の顔さえ見ていたくないような素振りは、全身から滲み出るほどだった。あれはフェイクだと自分に都合よく考える側面すらない。
この前の夜もそう。実花子と一緒にいたくないから、途中で適当な理由をつけて退席したのだ。
白鳥のうれしい情報提供も、実花子が積み重ねてきた悪い印象にあっけなく霞んでしまう。
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