一夜の艶事からお見合い夫婦営みます~極上社長の強引な求婚宣言~

乙女ならではの優しい気づかいができる千沙と、力仕事ならお任せの実花子。これが意外としっくりしたのだ。でこぼこコンビというのは、これだとはじめて知ったものだった。それ以来、千沙とは親友として付き合っている。

実花子の勤めていた会社が倒産したときに、自分の勤め先であるIT企業の『メディアテック』に口利きしたのは、ほかでもなく千沙だった。

千沙の友人が入社するにあたり、社内の男性陣は彼女のような女性が入ってくると期待に胸を膨らませていたそうだ。それが、女子力ゼロで化粧っ気のほとんどない実花子だったのだから、男性陣の落胆ぶりは想像に容易い。
一般事務として採用された実花子とは違い、大学で情報処理系を専攻していた千沙はSEとして働いている。

メディアテックの従業員数は百名ほど。会社はオフィス街に建つ地上二十階建てビルの十二階のワンフロアにある。小規模の会社ながらもソフトウエアの開発ではそこそこのシェアだ。実花子の自宅からは、徒歩と電車で三十分という比較的近い場所にある。


「また焼鳥屋でおじさまたちと飲みすぎ?」


実花子の日常生活を知り尽くしている千沙ならではの発言だ。
いつもだったらそこでうなずき、千沙から二日酔いに効く薬をもらって終了だが、今日は違う。


「ちょっといろんなことがありすぎて……」
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