皇女殿下の幸せフェードアウト計画
「イリス姫」

低い声が、私のすぐ傍で聞こえた。

それを確かめようとそちらを向くのに、体が重くてのろのろとしたものになった気がする。

「……フォルセティ」

「手を、失礼する」

まるでダンスをリードするみたいにフォルセティが私の手を取って、椅子に座らせてくれた。

座って初めて、私は自分の手足が震えていることに気が付いた。

「よく、頑張った」

低い声が、そう小さく言ってくれて、つんと鼻の奥が痛くなる。

ああ、なんだ。泣かなかったんじゃない。

実感が、遅かっただけだ。

(ばかね、私)

どうして私を置いていくのって、本当は思ったくせに。カッコつけて私は一緒に行けないって大見得切ったのに、本当はお母様が私を庇ってくれなかったことが一番辛かったんだわ。

ここには私の味方は誰もいない。

私の父親が皇帝陛下だと、お母様が誓ったからってそれを信じるかどうかは諸侯の気持ち次第。少なくとも裏切り行為をした女の言葉は信じるに値しないという意見が出たってしょうがないって当事者の私ですら思うもの。
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