秘密の懐妊~極上御曹司の赤ちゃんを授かりました~

車が路肩にぴたりと停止した。窓の外を見て翔悟さんの住んでいるマンションの近くだと気がついた時、会長が小さく息をつく。


「金輪際、翔悟と会わないでいただきたい。ヒルマも辞めていただきます。その代わり、手切金とは別に、堕胎の費用はもちろん当面の生活費などもこちらで負担しましょう」


身を引けとだけでなく、もしかしたら堕ろせとも言われるかもとしれないと覚悟はしていたが、実際に言葉で聞くとガツンと頭を殴られたような衝撃に襲われる。

しかも、それ前提で話を進めようとされ、握りしめた拳が憤りで震え出す。


「彼との間に授かった命です。私は産みたいと思っています」


これだけは譲れない。しっかりと会長と目を合わせて、強い気持ちではっきり告げる。やや間を置いてから、再び会長が短く息を吐き出した。


「産むと言うなら、それでも良いですよ。ただし、その子は蛭間が養子に迎えます。あなたに代わって大切に育てさせてもらいますよ」

「……そこまでするんですか」

「えぇ。本当に翔悟の子ならね」


言い返したいのに、頭の中が真っ白になってしまって言葉が出てこない。

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