君はロックなんか聴かない
「白石さんって、久間くんと付き合ってるの?」

「え、付き合ってないよ」白石さんは顔の前で萌え袖を横に振る。

急のえみちゃんの白石さんへの質問で私は動揺を隠せなかった。またえみちゃんと目が合った。

そして何故か何処か安心感があった。

私は一気に飲み物を飲み干した。味はよく分からなかった。

「そろそろ戻ろうか」

「うん」

スタジオに戻ると、青田さんは黙々とベースを弾いていた。

「真面目だね」

「ううん、でも、ちゃんとついていかないといけないから」

そしてまだ私たちは練習を始めた。

時間の許す限り音楽を続けた。世界を作る為に音楽をした。楽しい。


何度も何度も弾いた。歌った。同じ曲を引き続けたがそれでも飽きなかった。汗かき、叫んだ。

そして終わりの時間が来た。

アンプからシールドを抜く。

「楽しかったね」

「うん」

「ありがとう」

「バンドフェス楽しみだね」

「次いつにする?」

「来週はどう??」

「来週?大丈夫だよ」

ケースにギターをしまい、スタジオを出る。

「ありがとうございました」

帰りも店長はイカつい。

「今日はありがとう」

「うん、また来週ね、うん」

「学校でも明日会えるけど」

「そうだね、また明日だね」

「うん、また明日」

私はギターを担ぎ自転車を漕ぎ出した。

帰り道星を眺めながら、スタジオの余韻に浸る。
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