【完】溺愛したいのは、キミだけ。
背中まであるダークブラウンの長い髪は、いつも三つ編みお下げにしてる。


目にかかるくらい長い前髪は、よく江奈ちゃんや妹たちに「切らないの?」って言われるんだけど、地味な顔を隠せるような気がして落ち着くから、伸ばしたまんま。


クラスの女の子たちの大半はメイクをしているけれど、私は中学の頃からずっと変わらずノーメイクだし。


オシャレな妹の美羽にはよく「髪型変えてみたら?」とか「お姉ちゃんもメイクしようよ」って言われるけど、自分には似合わないような気がして、変える勇気がない。


「きゃーっ! 翠(みどり)くーん!!」


するとその時、途端に教室の入り口のほうから女の子たちのはしゃぐような声が聞こえてきて。


思わずそちらに視線を向けたら、そこにはキラキラと眩しいオーラを放つ茶髪の男の子の姿があった。


「おはよ」


「おはよー! 翠くんっ」


「朝練お疲れ様っ!」


キャッキャと騒ぐ女の子たちに囲まれる彼の名は、都築(つづき)翠くん。


うちの学年で一番モテると噂の超イケメン男子。


ワックスで整えられた明るい茶髪、両耳にはいくつかのピアス、オシャレに気崩した制服、そしてどこかの芸能人みたいに整ったキレイな顔立ち。


どこにいても目立つ彼は、言うまでもなくクラスの人気者で、いつも人に囲まれている。


私はまだ、ほとんど話したことがないんだけど……。



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