【完】溺愛したいのは、キミだけ。
「でたー、翠くんだ。あの人が教室入ってくると、女子達が騒ぐからすぐにわかるよね」


江奈ちゃんが翠くんのほうを見ながら感心したように話す。


「た、たしかに……。相変わらず大人気だね」


「どこにいても目立つんだよね~、あの人。朝練中も目立ってたよ。まぁ、あれだけ顔もスタイルも良くてスポーツ万能だったらモテるのもわからなくはないけどさぁ」


ちなみに翠くんはサッカー部のエースで、サッカーもめちゃくちゃ上手なんだとか。


陸上部の江奈ちゃんは、毎日同じグラウンドで練習してるから、サッカー部のこともよく見かけるみたい。


「うん、なんかキラキラしてるもんね。美羽が1年生の間でも人気だって言ってた」


「えーっ、すごいね~。なんであれで彼女いないんだろ? でもあの人、チャラチャラしてそうに見えて、部活は真面目にやってんのよね」


「そうなんだ」


「うん。いつも朝練も一番早く来てるし、サボってんの見たことないかも。なんかゆるくてテキトーなイメージしかないけど、根は真面目なのかなぁ」

江奈ちゃんの話に耳を傾けながら、再び翠くんのほうへと視線を戻す。


たしかに彼は、誰もが認めるイケメンだと思うし、カッコいい。


でも、いつも教室の隅にいて存在感のない私のような人間にとっては、眩しすぎて、住む世界が違う人って感じがする。


向こうが日向なら、私は日陰、みたいな。


きっと、これから先も関わることはないんだろうなぁ……。


そんなふうに思いながら、彼のことを遠い目で見つめていた。


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